温度センサーとは?仕組みや種類、用途を初心者にもわかりやすく解説
製造・研究現場の品質を左右する温度管理ですが、用途に最適なセンサー選びに頭を悩ませていませんか?
本記事では、熱電対やサーミスタなど主要な温度センサーの特徴から選び方まで、専門的な知見を交えて分かりやすく解説します。正しい選定知識を身につけ、製品開発や工程管理の効率化にお役立てください。
温度センサーとは?
まずは温度センサーの仕組みや定義について、わかりやすく解説します。
温度センサーとは
温度を測る仕組みは意外とシンプルで、温度が変わると物質の電気抵抗や電圧が変化する、あるいは物体から出る赤外線の量が変わるといった物理現象を利用しています。こうした熱の変化を電気信号に置き換えることで、人間が温度計を目で見て確認しなくても、機械が自ら微細なコントロールを行ったり、膨大なデータを記録したりすることが可能になります。方式は違えど、「熱を電気の言葉に翻訳する」という役割は共通しています。
温度センサーの仕組み
温度センサーは、温度変化に伴う物質の電気抵抗や熱起電力の変化、あるいは赤外線放射といった物理現象を利用して温度を測定します。これらの変化を電気信号に変換することで、単なる数値表示にとどまらず、機器の精密な自動制御やデータ解析を可能にしています。用途に応じて測定原理は異なりますが、「熱の状態を電気信号に置き換える」という基本構造はすべてのセンサーに共通しています。
温度センサーの主な種類と特徴
温度センサーは、その測定原理によって多種多様な種類があり、それぞれ異なる特性や得意な用途を持っています。ここでは、代表的な温度センサーの種類と、その特徴について詳しく解説します。
熱電対(Thermocouple)
数あるセンサーの中で最もポピュラーなのが「熱電対」です。これは2種類の異なる金属線を繋ぎ合わせたときに発生する微弱な電気(熱起電力)を利用して温度を測ります。マイナス200度から2000度を超える高温まで測れる守備範囲の広さと、頑丈で壊れにくい構造、そして安価であることが最大の強みです。精密さよりもタフさが求められる産業現場で圧倒的なシェアを誇っています。
測温抵抗体(RTD)
一方で、とにかく正確さが求められる場面で選ばれるのが「測温抵抗体」です。温度が変わると電気の流れにくさ(抵抗値)が変わる金属の性質を利用しており、特に安定している白金(プラチナ)を使ったものが主流です。熱電対に比べると値段は高く、反応速度も少しゆっくりですが、その精度と長期的な安定性は抜群です。そのため、厳しい品質管理が必要な工場や、他の温度計の基準となるような信頼性が問われる場所で活躍しています。
サーミスタ
家電製品などで最も広く使われているのが、このサーミスタです。 仕組みはシンプルで、温度が変わると電気の流れやすさ(抵抗値)が変わるという半導体の性質を利用しています。特に「NTC」と呼ばれるタイプは、温度が上がると抵抗が下がるという特徴を持っています。
最大の武器は、その安さと感度の良さです。小さなサイズで作れる上に、わずかな温度変化にも敏感に反応します。 ただし、測定できる温度範囲はマイナス50度から300度程度まで。また、温度との関係が単純な直線にならない「クセ」があるため、広い範囲を大雑把に測るよりは、特定の範囲を細かく監視するような用途に向いています。
IC温度センサー
もし、スマホやパソコンの内部温度を測りたいなら、このIC温度センサーの出番です。 その名の通り、温度を測る機能をひとつのチップ(IC)に詰め込んだものです。アナログ出力だけでなく、デジタルで数値を出力できるタイプが多いのが特徴です。
ここがポイント マイコンやCPUといったデジタル機器との相性が抜群です。サーミスタのような複雑な計算や校正をしなくても、最初から扱いやすいデータとして温度を教えてくれます。 測定範囲は150度程度までと狭めですが、電子機器のオーバーヒート監視など、システムへの組み込みやすさでは右に出るものはいません。
赤外線温度センサー(非接触式)
コロナ禍でよく見かけるようになった「非接触体温計」に使われているのがこの技術です。 物体から出ている赤外線をキャッチして、そこから温度を計算します。
最大の特徴は「非接触」であること。動いているもの、衛生的に触りたくない食品、あるいは数千度にもなる溶鉱炉の鉄など、物理的に接触できない対象でも測定可能です。しかも、反応速度が非常に速い。 一方で、測定対象の素材や表面の状態(光沢など)によって数値がズレやすいという繊細な一面もありますが、他のセンサーには真似できない特殊な環境でその真価を発揮します。
温度センサーの選定ポイント
温度センサーを選ぶ際は、単にスペックを見るだけでなく、何をどのような環境で測りたいのか、そしてコストやメンテナンスまで含めたトータルな視点を持つことが大切です。
測定対象と測定範囲
まずは測定対象が液体か気体か、あるいは接触可能かといった条件を整理し、必要な温度範囲を明確にすることから始めましょう。極低温から高温まで広く測るなら熱電対、特定の範囲を精密に監視するならサーミスタというように、目的に応じて最適な種類は変わってきます。
求められる精度と応答速度
医療現場のようにわずかな誤差も許されない高精度な測定が必要なのか、それとも製造ラインのように急激な温度変化を瞬時に捉えるスピードが最優先なのかを見極めましょう。用途に合わない過剰なスペックはコスト増を招くだけですので、必要な精度と応答速度のバランスを考慮することが重要です。
設置環境(耐食性、防水性など)
センサーを長く安定して使い続けるためには、設置場所の温度だけでなく、湿気やホコリ、腐食性ガス、振動といった周囲の環境に耐えられるかどうかがカギを握ります。防水性能や耐食素材の選定はもちろん、ノイズの影響を受けやすい場所では適切なシールド対策も忘れてはなりません。
出力信号の種類(アナログ/デジタル)
測定したデータをどのようにシステムへ送るかも重要なポイントで、シンプルなアナログ出力から、ノイズに強くデータ連携が容易なデジタル出力、配線不要の無線通信まで選択肢は多様です。接続する機器との相性や設置場所の状況に合わせて、最も扱いやすく信頼性の高い信号形式を選ぶ必要があります。
コストと保守性
導入時の本体価格だけでなく、定期的な校正や故障時の交換の手間といったランニングコストまで含めて検討することが賢い選び方です。安価なものを頻繁に交換するよりも、耐久性の高い製品を長く使う方が結果的にコストを抑えられる場合も多いため、長期的な視点での判断が求められます。
当社の温度センサー関連ソリューション
私たちは長年の経験と技術力を活かし、お客様の多様なニーズに合わせた高精度かつ信頼性の高い温度センサーソリューションを提供しています。製品の選定から設置、その後の運用保守に至るまで一貫してサポートすることで、現場の課題解決に貢献します。
航空宇宙機器で培った高精度計測技術
航空宇宙分野という極限の環境で鍛え上げられた当社の技術は、微細な温度変化も見逃さない圧倒的な精度と、過酷な状況にも耐えうる信頼性を誇ります。このハイレベルな品質管理と校正技術を産業用機器にも応用することで、他にはない安心をお客様の現場へお届けしています。
産業計測機器への応用
製造業やエネルギー、医療といった幅広い産業分野において、当社のセンサーは品質管理や安全確保の要として活躍しています。近年ではIoTやDXの流れに合わせ、遠隔監視やデータ解析と連携したソリューションも展開し、お客様の工場のスマート化を強力に後押ししています。
お客様と一体となった製品開発
既製品では解決できない特殊な課題に対しては、お客様と一緒になって解決策を探る共同開発スタイルを大切にしています。綿密なヒアリングから試作、現場での検証までを二人三脚で進めることで、それぞれの現場に完全にフィットした独自のシステムを作り上げることが可能です。
カスタマイズ対応とサポート体制
特殊な形状や素材、測定範囲といった細かい仕様変更にも柔軟に対応し、それぞれの現場に最適な形にカスタマイズいたします。導入後の技術相談やトラブルシューティング、精度を維持するための定期校正まで、生涯にわたって安心して使い続けていただける手厚いサポート体制を整えています。
よくある質問(FAQ)
Q. 温度センサーの種類を教えてください
温度センサーには高温に強い熱電対、精度抜群の測温抵抗体、安価で高感度なサーミスタなど、それぞれ得意分野が異なる個性的な種類が存在します。さらにデジタル機器と相性の良いICセンサーや、触れずに測れる赤外線タイプなどもあり、これらを適材適所で使い分けることが計測の基本です。
Q. 温度センサーの用途は何ですか?
私たちの身の回りでは、エアコンや冷蔵庫といった家電製品の制御から、工場のライン監視、さらには体温計による健康管理まで、あらゆる場面で温度センサーが活躍しています。安全を守り、品質を維持し、快適な環境を作るために、温度というデータは今の社会になくてはならない存在なのです。
Q. 温度センサーの応用例を教えてください
具体的には、炊飯器でふっくらご飯を炊くための火力調整や、自動車エンジンの燃費向上、サーバーセンターの熱暴走防止など、その活躍の場は枚挙にいとまがありません。見えないところで私たちの生活を支え、産業の効率化や安全性を底上げしているのが温度センサーという技術なのです。
まとめ
温度センサーは、製造現場の品質管理や安全な暮らしを支える不可欠な存在です。多種多様な方式があるからこそ、環境や目的に合致した最適な一本を選定することが成功のカギを握ります。
当社では、航空宇宙品質の高精度技術と柔軟なカスタマイズ対応で、お客様の現場にベストなソリューションを提供いたします。センサー選定から運用保守まで、計測に関するお悩みは確かな実績を持つ私たちにぜひお任せください。



